兵庫のきのこ図鑑・兵庫で見られるきのこ(2012年版).pdf

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兵庫の
図鑑
兵庫で見られるきのこ
兵庫の
きこ
図鑑
兵庫で見られるきのこ
2012年6月
社団法人 兵庫県治山林道協会
はじめに
 兵庫県の森林面積は 561 千 ha で県土の約 7 割を占めています。日本海側か
ら太平洋岸まで、また標高 1510m の氷ノ山から海岸部まで、多種多様な森林
に覆われており、ブナやミズナラ、コナラ、スギ・ヒノキ、アカマツ・クロマツな
ど多くの樹木を見ることができます。普段私たちは、樹木や植物にばかり目が行
きますが、地表部や枯れ木の上を注意深く見てみると、色々なキノコがひっそり
と生活しているのがわかります。中にはキノコと思えないような変わった�½�のもの
も目にすることができ、案外どこにでもいろいろなキノコが発生していることに気
づきます。
 しかし、私たちが普通に目にしているのは、�½�らの身�½�のうちのほんの一部分
で、身�½�のほとんどは、土壌や枯れ木の中に菌糸の状態で広がっており、キノコ
は、地球上で最大の生物だとも言われています。
 森林の中で発生する主なキノコは、地表の生きた木と助け合って生活するキノ
コ(菌根菌)
、木材を腐らせて生活するキノコ(木材腐�½菌)
、�½ち葉・木の実・
動物の死骸やフンを腐らせて生活するキノコ(�½ち葉分解菌)の三つのタイプが
あります。
 これらの働きにより有機物の分解を進め、土壌中の動物がそれを食べることに
より、養分が豊富な森の土を�½�ることができます。もし、キノコやカビが存在し
なければ、木や植物が育つ豊かな森を�½�ることはできません。
 この『兵庫のきのこ図鑑』は、兵庫県内に発生するキノコを紹介するために、
兵庫県林業会議発行の『兵庫の林業』に 2005 年 4 月から 2012 年 1 月まで
7 年間 28 回に渡って連載されたものをとりまとめたものです。兵庫県の多様な
森林はキノコにとっても非常に恵まれた環境で、多様なキノコ相が広がっています。
色とりどりの、様々な�½�態のキノコの世界を少しでも知っていただき、キノコを通
じて兵庫県の森林の豊かさを理解していただければと願っています。
 2012 年 6 月
社団法人 兵庫県治山林道協会長 
  宍粟市長  
田路 勝
目 次
●きのことは
●きのこの�½�割
●きのこの一生
●きのこの分類
●きのこの観察のポイント
●兵庫のきのこ
キヒラタケ
トキイロヒラタケ
ヒラタケ
ウスヒラタケ
マツオウジ
シイタケ
ホンシメジ
シャカシメジ
ヤグラタケ
ウラムラサキ
ツキヨタケ
ムラサキシメジ
サマツモドキ
キシメジ
マツタケ
ニセマツタケ
ナラタケ
ナラタケモドキ
オオイチョウタケ
スギヒラタケ
ムキタケ
フチドリツエタケ
チシオタケ
ヒメカバイロタケ
ダイダイガサ
イボテングタケ
タマゴタケ
タマゴタケモドキ
クロタマゴテングタケ
カブラテングタケ
シロオニタケ
ハイカグラテングタケ
ヒメベニテングタケ
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ドクツルタケ
ニオイドクツルタケ
ササクレシロオニタケ
オオオニテングタケ
ツルタケ
ヨ�½オイツルタケ
ミヤマタマゴタケ
ハイイロオニタケ
シロテングタケ
フクロツルタケ
コトヒラシロテングタケ
コシロオニタケ
キヌオオフクロタケ
ヒイロベニヒダタケ
オオシロカラカサタケ
カラカサタケ
ウスキモリノカサ
コガネタケ
イヌセンボンタケ
ムジナタケ
ヤナギマツタケ
モエギタケ
クリタケ
ニガクリタケ
ヒカゲシビレタケ
ナメコ
スギタケ
アカツムタケ
カオリツムタケ
チャナメツムタケ
ナガエノスギタケ
ショウゲンジ
クリフウセンタケ
ムレオオフウセンタケ
ムラサキアブラシメジモドキ
ヌメリササタケ
ムラサキフウセンタケ
オオワライタケ
ミドリスギタケ
ミイノモミウラモドキ
アカイボカサタケ
キイボカサタケ
シロイボカサタケ
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ウラベニホテイシメジ
クサウラベニタケ
ハルシメジ
コンイロイッポンシメジ
ニワタケ
オウギタケ
ハナイグチ
ヌメリイグチ
チチアワタケ
アミタケ
キヒダタケ
キイロイグチ
ヌメリコウジタケ
ヤマドリタケモドキ
ムラサキヤマドリタケ
キアミアシイグチ
アメリカウラベニイロガワリ
ダイダイイグチ
ミドリニガイグチ
アシボ�½ニガイグチ
アルカリキゾメニガイグチ
ブドウニガイグチ
ニガイグチモドキ
フモトニガイグチ
アカヤマドリ
ヤシャイグチ
キクバナイグチ
ミヤマベニイグチ
アシナガイグチ
ベニイグチ
ドクベニタケ
アイタケ
カレバハツ
クサイロハツ
ウコンハツ
キチチタケ
アカモミタケ
チチタケ
ルリハツタケ
ニオイワチチタケ
チョウジチチタケ
ハツタケ
アカハツ
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クロラッパタケ
オオムラサキアンズタケ
ベニナギナタタケ
ホウキタケの仲間
ウスタケ
カンゾウタケ
ヤマブシタケ
コウタケ
ヒトクチタケ
マイタケ
ヒイロタケ
カワラタケ
マンネンタケ
コフキサルノコシカケ
ツチグリ
コツブタケ
クチベニタケ
ハタケチャダイゴケ
オニフスベ
ホコリタケ
カゴタケ
サンコタケ
スッポンタケ
アカダマキヌガサタケ
ハナビラニカワタケ
キクラゲ
アラゲキクラゲ
マユハキタケ
カキノミタケ
オオゴムタケ
シャグマアミガサタケ
クロノボリリュウタケ
トガリアミガサタケ
ヒイロチャワンタケ
オオセミタケ
カエンタケ
●兵庫のきのこ以外のもの
ベニテングタケ
ウスキキヌガサタケ
ヤマドリタケ
オオダイアシベニイグチ
オオシロアリタケ
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きのことは
 現在、生物の世界は、概念図のように、大
きく五つの群に分けることができると言う説(五
界説)が有力となっています。
 キノコとは、「五つの群のひとつの菌界に
属する生物が、子孫を残すために�½�る器官(子
実�½�)で、肉眼で見える大きさのもの」と定
義することができます。植物に例えるなら花
や実に相�½�するものです。
 キノコを�½�らないときは、土の中や、倒木
などの中で、菌糸と呼ばれる円筒状のごく細
い細胞として生活をしています。菌糸は、一
列につながり、ところどころで枝分かれしたり、
集まったりして網の目のように広がっています。
きのこの�½�割
担子菌
子のう菌
不完全菌
(きのこ
かび)
 キノコやかびなどの菌類は植物や動物の遺�½�の分解者と理解されています。ヤマブシ
タケやチシオタケなどキノコの働きによって倒木や�½葉�½枝が分解され、植物が利用可
�½な肥料分になります。
 あるいは、アカマツやコナラなどの
樹木の根と共生して、水分や、リン・
窒素などの無機養分を与える菌類もあ
ります。これらの菌類は菌根菌と呼ば
れ、無機養分を与える代わりに樹木が
光合成で�½�る炭水化物の10∼20%を
シダ コケ
裸子植物
脊椎動物
被子植物
昆虫
(草や木)
原始生物界
ゾウリムシ
ドリムシ
モネラ界
細菌
らん藻
もらっていると言われています。マツ
タケやタマゴタケなどの菌根菌と共生
している樹木は、水分や養分の吸収効
率が上がるので生長が良くなり、病気
ラッシタケ科 チシオタケ
生物系統の概念図
 キノコは、生活型や�½�から、ショウロなどの地下生菌、ヤマブシタケやオオゴムタケ
にもかかりにくくなります。
 また、生きている昆虫にとりついて
殺し、虫�½�からキノコを発生させる冬
虫夏草の仲間もいます。この仲間は、
サナギタケとブナアオシャチホコとい
うガの関係のように、昆虫が発生した
翌年に、その昆虫にとりついたキノコ
が大発生し、森林昆虫の密度をコント
ロールしていることが知られています。
サンゴハリタケ科 ヤマブシタケ
クロチャワンタケ科 オオゴムタケ
など倒木や切り株に生える材上生菌、マツタケや
ヒメカンムリタケなど地面に生える地上生菌に分
けることがあります。また、分類学的に、胞子が
子のうという袋の中で�½�られる子のう菌、担子器
と呼ばれる細胞の先端に胞子が�½�られる担子菌に
分けることもあります。
テングノメシガイ科 ヒメカンムリタケ
テングタケ科 タマゴタケ
1
兵庫のきのこ
兵庫県治山林道協会
2
きのこの一生
 キノコの胞子(植物に例えるなら種子に相�½�
するもの)は発�½し、核を一つもった単核菌糸
になります。単核菌糸は、生長や枝分かれ、合
着を繰り返しながら、網状の単核菌糸�½�になり
ます。相性の良い単核菌糸どうしが接近すると、
菌糸壁が融合し、いずれか一方の菌糸細胞内の
核が他方の菌糸細胞内に移動し、やがて核を二
つもった二次菌糸になります。この二次菌糸の
菌糸�½�からキノコができ、胞子が散布されます。
 キノコが動物や植物と異なるのは、動物や植物の細胞が複相(2�½�)の核を一つもっ
ているのに対し、キノコは単相(�½�)の核を二つもっています、また、動物や植物が雄
と雌という二つの性をもっているのに対し、キノコは種類によって性の数が異なり、四
つの性を持つキノコの仲間もいます。
ヨ�½オイツルタケ
ヨ�½オイツルタケの担子器
と先端にできた4胞子
(フロキシンで染色)
 担子菌にはさらに、軟質でヒダあるいは多数の小孔があるハラタケ類、サルノコシカ
ケの仲間やホウキタケなどから成るヒダナシタケ類、最初は柔らかい卵状で、成熟する
と�½�内に胞子を�½�ったり、地表に現れる腹菌類、柔らかくて弾力のあるキクラゲ類に分
けることができます。キノコ狩りの対象となっているキノコは主にこの担子菌の仲間です。
桜の樹下に生えるトガリアミガサタケ
トガリアミガサタケの子
のうとその中に並んだ8
個の胞子
オニイグチと胞子     
ベニイグチと胞子      シロイボカサタケと胞子
きのこの分類
 キノコを大きく分けると、子のうという袋の中に胞子が�½�られるトガリアミガサタケ
などの子のう菌、担子器と呼ばれる細胞の先に胞子ができるヨ�½オイツルタケなどの担
子菌に分かれます。子のうや担子器は、顕微鏡を用いないと見ることが出来ませんが、
キノコを生物学的に分ける基本的な器官であるといえます。
 キノコは微生物ですので、種類を正確に調べるためには顕微鏡観察を欠かすことができ
ません。胞子だけでもヨ�½オイツルタケのように球�½�のものや、
トガリアミガサタケのよう
な楕円�½�、シロイボカサタケのような多角�½�のものもあり、また胞子表面の模様も様々です。
 最近は、DNA の塩基配列による分類が進み、今までの�½�態に基づく分類�½�系が大きく
見直されています。新しい分類では、目や科の再編成が行なわれ、新たな目や新しい科名
となっています。
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兵庫のきのこ
兵庫県治山林道協会
4
Zgłoś jeśli naruszono regulamin